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【第7回】〜シリーズ東京湾 vol.1〜八景沖 金アジ|本当の旨さを味わう 八景沖の“金アジ”
美味しいこと以外、謎の多い魚がアジだ
 さて。その第1回目、時節柄アジの登場と相成り、冒頭に「金アジ」と書いたが、これは体色が黄色がかったマアジの呼称である。
「アジはここ数年、一年中釣れる魚になってしまったけど、今日釣れてる20センチ足らずのアジね。この“金アジ”を味わえるのはこの9月を中心とした一〜二カ月間だけ。そして、その本当の旨さは、網で獲った魚じゃわからない。このアジの甘みを味わうためには、釣りをしなければならないんだ」
 この小さなアジの美味しい理由はいくつがある。
 まず金アジという名前。和名をマアジというが、これには金アジ(黄アジ)と黒アジの2つのタイプが存在する。しかし、この2つのアジを遺伝子レベルで調べると、まったく同じマアジなのだという。
 だがウエカツによると、この2種は別種のように相違点が多い。
 黒アジは魚体も腹膜も血液も黒く、ウロコも大きくゴツい。産卵期が違うから脂の乗る時期が違えば肉質も違う。金アジの身は白身系だが黒アジは赤身系だ。どこでどう違ってくるのか。実はそれが今だに謎だという。
 アジが九州ないし本州の西の海で生まれ、東方に回遊するということはわかっているのだが、どの過程で、黒アジと金アジに別れるのか、その過程がわからない。
 一説によると、大きく回遊して種の分散と保存を計っているのが黒アジで、分散されて居つくと金アジではないかというのだが、沿岸に居ついたアジの色が黄色っぽくなり、体が平たく幅広になってくるのも、わからないままだ。
 だが誰もがわかっていることがある。黒アジよりも金アジの方が食味に関してはダントツに甘美であるということだ。もちろん金アジは東京湾以外の日本各地に棲息するが、こと金沢八景沖の金アジの食味は抜群だという。
謎の多い金アジと黒アジしかし金アジの旨さは抜群
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(上) 真剣に釣りに興ずるウエカツと、若干船酔い気味で視線の虚ろな西潟。
(下) アジは釣れたらば最適の温度管理を施し、今回の対象外のサバには、得意の神経締めを施すという万全の釣魚の持ち帰り態勢
水に反映される人の意識と土地の力
 ウエカツの説明によると、金沢八景の豊かさを支えているのは平潟湾という小さな湾であり、ここには3本もの川が流れ込んでいるのだそうだ。しかもそのうちの1本は、土に染み渡った栄養を豊富に含んだ湧き水だという。
 さらに平潟湾には、地元・金沢小学校や海辺研究会などの努力によって復活したアマモが繁殖し、魚を含めた多種多様な生物のゆりかごになっており、その恵みが、全て周辺の海に分散し行き渡ってゆく。むろん、そこに住む魚が不味いはずがない。
「でもそんな魚を、東京都民や飲食店が、どれだけ知っているか、ということなんだ」ウエカツは、このことを気にしている。
 身近で獲れるにもかかわらず、こんな素晴らしい魚が、思いのほか知られずに埋もれている。そして、東京湾にはそのようなモッタイナイ魚がまだまだ山ほどいるのだと、ウエカツは言う。
「東京湾を舞台に、そんな魚を『食楽』で追いかけてみたい。都会でいちばん身近な海の21世紀の姿を、その魅力を、江戸前の魚を題材として伝えることは有意義だと思うけどな」こうしてウエカツと『食楽』のこの連載におけるテーマが新たに決まったというわけだ。
「水というものは、池であれ、川であれ、海であれ、その水の近くに住む人間の、心の鏡だと思う。人心荒れれば水も荒れる。水と、どのような付き合い方をしてきたのか、今はどうなのか、これからどうしようとしているのか、それらは全て否応なしに水の有り様に映し出されている。水を見れば、その土地の力というもの、地域住民の意識、暮らし、そういうものが見えてくる」つまり東京湾を見れば、首都圏に住む人間が総体として見えてくるということになる。
 ただ食という側面だけではなく、我々の暮らし方の指針を考える上でも、江戸前の魚を、そして東京湾のことを、今一度、日常生活の中で、我々は考えるべき時期に来ているのではないだろうか。
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今回の船宿「荒川屋」
京浜急行の金沢八景駅から徒歩わずか5分。シャワーも完備し、女性アングラーにも優しいと話題の船宿。釣った魚を食べれる居酒屋(予約制)を併設。
神奈川県横浜市金沢区洲崎町6-1 TEL 045-701-6672
【時】5:00〜21:00 【休】木 【HP】http://www.arakawaya.jp/
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