連載 ニッポン釣魚紀行 料理人、海へ。
VOL.2
料理人 「コルニーチェ」京大輔氏×ヤリイカ
世界で最高の食材市場は海にある。そして、そこでの最高の食材調達方法は“自らが釣り上げること”だ。そんな理想の食楽空間を求め、イタリアンシェフ・京大輔が、海底200mに潜む旬のヤリイカに挑み、釣り上げ、そして調理する!
きょう・だいすけ◎『青山サバティーニ』『西麻布アクアパッツァ』を経て、23歳でイタリア中部のラツィオ、アブルッツォ、トスカーナ州で約2年半単身修業。さらに約1ヶ月、本土とシチリアを食べ歩いて帰国後2001年9月、東京・緑が丘に『コルニーチェ』をオープン。『魚介のイタリア料理』の著書もある。

撮影◎村岡栄治 取材・文◎佐藤克之 撮影協力◎グローブライド(株)
首都圏屈指の漁場で高級なイカ釣りに挑む!
 高くシャクリ上げたロッドの穂先がかすかにおじきをしている。
「お〜っ、のったのった!」
『コルニーチェ』シェフ・京大輔は、うれしそうにそう言いながら電動リールのスイッチを入れた。
  水深200メートルの海底で捕らえられた旬の食材が、その姿を水面に現す。
  ヤリイカだ。
  捕れたてのヤリイカは、市場に並ぶイカとは見た目からして完全に一線を画す。
  ガラスのように透き通った体色。光を発しているかのように深く輝くエメラルドグリーンの眼。
  183センチという長身ならではの長い腕を利して、見事船中一杯目となるヤリイカを一気に取り込んだ京も、その艶めかしくも美しい透明の姿を見て、
「キレイだよねぇ〜。そして美味しそうだよねェ〜」
  と言うセリフを思わず口にした。
  京が乗り込んだ釣船は、剣崎間口港・喜平治丸。イカを釣らせることにかけては屈指の名船宿が、ヤリイカを釣らせるために走った本日のポイントが、通称“沖の瀬”である。
  三浦半島の先端である城ヶ島から南に引いたラインと、房総半島の先端である洲崎から西に引いたラインのぶつかる辺り。
ここだけ隆起した海底に、太平洋の黒潮がぶつかり、イカに限らず、首都圏屈指の豊かな漁場になっているのだ。
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ヤリイカ
冬が旬のツツイカ。身は淡白で柔らかい。よく聞く名前だが、実は高級なイカで、スーパーに並ぶことは少ない。
釣り編
料理編